搾油試験⑥ ツバキ(ワビスケ)

ワビスケツバキとはWhat is Tsubaki?

ツバキ(ヤブツバキ)は日本原産の常緑樹です。色鮮やかな花が良く知られていますが、その種子から採れる椿油にはオレイン酸が豊富に含まれ、食用、美容、防錆など様々な用途に昔から重用されてきました。髪油として特に有名です。

今回の材料はワビスケという園芸品種の種子です。ワビスケはヤブツバキとチャノキ(お茶の木)の掛け合わせで作られた品種ですが、その歴史は古く、千利休がその花を愛でたという逸話があるそうです。したがいまして、今回作る油は厳密にはツバキ油ではありません。

ツバキの仲間にはチャノキやサザンカなどの他、人工的に掛け合わせて作られた園芸品種も多数ありますが、本来のツバキ油はヤブツバキから採られた油のことを指します。椿油の名称で販売されている市販の油も、近縁種であるユチャなどから作られているものも多いのでご注意ください。成分表に「カメリア種子油」とあるものはヤブツバキ以外の原材料から作られたものという意味なのだそうです。


ツバキの搾油

実から種子を取り出すPreparation

ツバキの実は熟すと口がぱっくりと開き、中から黒い種子がこぼれ落ちます。今回入手した実はまだ緑色でしたので、3日ほど天日干しをして追熟しました。




粉砕するCrushing

今回、生のまま搾ってみたところほとんど油を得ることができなかったので、インターネットに載っている情報を参考に、粉砕 → 蒸すという前処理を行ないました。

300g分の種子を厚手のポリ袋に入れ、ハンマーで叩いて砕きます。袋が破れないよう、段ボールを一枚間に挟んで叩きました。

ある程度細かくなったところで、更にすり鉢に入れてすりつぶします。すりつぶしていく内に少し油がにじみ出てきました。


蒸すSteaming

すりつぶした種子を不織布袋に入れます(この時点で293g)。蒸し器に入れて10分ほど蒸し上げました。蒸しあがりの重量を量ると314gでした。単純計算で21gの水分が加わったことになります。


圧搾の様子Pressing

搾油機にセットして圧力を加えていくと、甘い香りと共に黄色の油が流れ出します。生のまま搾ったときはほとんど油が出なかったので、前処理の効果は確かにあったようです。


採取された油Extracted Oil

原料300gから、66gの油が採取されました。(原料比22wt%)

この状態では微細な固形分が混ざっています。そのまま静置しておけば固形分はやがて沈殿してきますが、濾過すると澄んだ油になります。


濾過した油Filtered Oil

コーヒー用のペーパーフィルターで濾過したあとの油です。油はゆっくりと落ちていきますため、今回の量の濾過には丸一日かかりました。フィルターや器具などにどうしても付着してしまうロスもあり、最終的に油の重量は61.4gとなりました(原料比20wt%)。

完成した油はナッツのような甘い風味がします。そのまま食べても美味しい油です。


搾りかすPomace

搾りかすです。今回は殻剥きを行わず、殻ごと粉砕したため、黒色の固い殻の破片が残っています。


搾油結果のまとめ

搾油試験結果表
原材料名 ワビスケツバキ
産地 大阪府
材料重量 300 g
前処理 粉砕、すりつぶし後に10分間蒸し上げ
選別 なし
濾布 不織布袋(標準品)
後処理 コーヒー用ペーパーフィルターにて濾過
採油量 61.4 g (原料比 20.5 wt%)

ご注意ください