非電化工房がスペクトロメーターを作った・・・そのわけ

葉山町(神奈川)から那須町(栃木県)に・・・2007年に非電化工房は引っ越しました。テーマパークを建設したくなったからです。テーマは、「エネルギーとお金を使わなくても得られる豊かさ」を体感していただくことです。

3月11日、福島第一原発事故が発生しました。那須町は原発から100kmほどに位置しますが、風向きの関係で、福島市と同等の放射能に見舞われました。脅えた住民は非電化工房に列をなして相談に訪れました。非電化工房は放射線被曝対策の知識と技術が豊富だったからです(事故を懸念して30年間勉強してきたからです)。

5月9日には「那須希望の砦」という市民団体が500人規模でスタートしました。この町に長く住む子供たちを放射能から守るためです。時には千人以上が数千箇所の測定を行って、子供たちが置かれている状況を隈なく調査しました。土壌や食品や水の放射能汚染状況も調べ上げました。

2011年秋には、子供たちの被曝状況(外部被曝と内部被曝)と対策指針も明快になりました。例えば、小学生の外部被曝量の70〜80%は自宅の室内における被曝であり、対策のためには周囲の地表面と屋根上と樋下に溜まった放射性物質を取り除けばよいことがわかり、その取り除き方を定めました。例えば食品については、37ベクレル/kgという自主基準を定め(当時の国の基準は500ベクレル/kg)、生産者も販売者も学校も親もこれを守るようにしました。

やがて、非電化工房の活動は那須町だけに留まらず、栃木県全域・群馬県・茨城県・千葉県・福島県に広がり、各地の住民や行政をサポートしてきました。

これらの活動には、精密な放射線計測器が不可欠でした。しかし精密な計測器は非常に高価です。食品などの放射能汚染度を測定するガンマ線スペクトロメーターでも分解能の高い「ゲルマニウム半導体検出装置」は本体だけでも1500万円もします。簡便に測定する「NaI(Tl)シンチレーション検出装置」でも数百万円と高額でした。福島県内でしたら補助金がでてきますが、福島県外では一円も補助してもらえません。

困っていらっしゃる大勢の方が非電化工房に相談に見えました。幸いに、非電化工房は放射能測定技術を蓄積してありましたから、ガンマ線スペクトロメーターを制作することは可能でした。代表の藤村が教鞭を取っている日本大学工学部には、「ゲルマニウム半導体検出装置」が完備されていますから、非電化工房で作った「NaI(Tl)シンチレーション検出装置」による放射能検出値を「ゲルマニウム半導体検出装置」によるものに近づけることが容易でした。

このようにして作られたガンマ線スペクトロメーター(愛称:SPECTRA)は、お金の余裕が無い福島県外の方に限って原価で提供され、青森県から福岡県まで、広い範囲で活躍しています。例えば栃木県のよつ葉生協は、SPECTRAを活用して、「お米の放射能レベルは5ベクレル/kg以下」を保証しています。

関連文書: 藤村靖之「大人ができること」、『科学』2012年3月号より

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