モンゴル非電化プロジェクト2004 現地テスト レポート    
    吉井の感想文
                 
                                 伊藤の感想文
 
                      ――日中も庫内温度4℃以下・・・非電化冷蔵庫テストは大成功! ―― 

                     by 藤村

10月2日11時、成田空港集合。 メンバーは藤村、麻生義継、吉井浩一、石井洋走、伊藤洋志の5名。
初顔合わせ同士がほとんどだったが、10分で意気投合(ハヤイ!)。

13:30離陸の予定が、18:00に変更。 モンゴル航空ではよく経験しているので、ここは慌てず騒がず。
事前の打ち合わせ不足(というより全然していない)の解消に充てる。 
吉井・石井・伊藤はモンゴル語の猛勉強を始めるが、藤村・麻生は冷ややかに見ている(ドウセ マニアイッコ ナイサ!)。

現地時間23時(日本時間24時ウランバートル到着
モンゴル側主役のバギーさん(Gomboragchaa Bat-erdene さん)と、美人通訳のオドさんの出迎えを受ける。
オドさんは熊本大学と新潟大学で1年づつ日本語を勉強したそうだが、麻生のきつい大阪弁も完璧に理解できる。
外は1℃。昨年12月に来たとき(ー40℃だった!)ほどではないが、さすがに寒い! 
市内のホテルに直行。 シャワーの出し方が判らず、吉井・石井は冷水を浴びて凍える。

10月3日時、ホテルで朝食を兼ねてバギーさんとスケジュール調整。  資材の準備状況も確認。
0時ホテル発、RV車でバギーさん経営のツーリストキャンプMospaに移動。  Mospaはウランバートルから西方に60km。
半端じゃない凸凹道を猛スピードで走るので、胃袋に収まった朝食が飛び出しそうになる(慣れているので驚かないが)。















           バギーさんのツーリストキャンプMospa全景(ヒロイ!)



出迎えてくれた犬(デカイ!)

1時、Mospa着。バギーさんの奥さんとスタッフと犬(驚くほど大きい)の出迎えを受ける。
Mospaは200×200mの敷地に23の宿泊用ゲルと集会用木造建物が建てられている。
周囲は見渡す限りの草原。  360度の地平線と雲一つ無い青空・・・・まさにモンゴル。
高校生の頃からモンゴルに憧れていた伊藤は、早くも感動の涙目。
因みに、土地は適当に線を引いて届ければ自分の土地になるそうだ(ウラヤマシイ!)。

非電化冷蔵庫建設開始。 ゲルの北側に設置場所を決め、早速掘り開始
像以上に硬い土にスコップの刃が立たない。 麻生も伊藤も、スコップ一堀で10ccくらいの土しかすくえない。 体重80kgで力自慢の藤村も20cc。 表面は草の根が硬く、その下は石だらけ。モンゴルの土壌の厳しさを実感しつつ、先行きに暗澹となる。 そこにバギーさん登場。身体は大きくはないのに驚くほどのパワフルさ(朝青龍なみ?)。パワーショベルのごとく掘り進み、30分後には幅90cm、奥行き60cm、深さ50cmの穴のでき上がり。

しかし暑い! 空が澄んでいると陽射しはこうも強いものなのか!
帽子を忘れた麻生の顔は早くも日焼けで赤黒くなり始めた。

何故か、モンゴルの人よりも黒い。

パワフルに掘るバギーさん
呆然と見守る麻生、うなだれる伊藤

穴に木枠を嵌め、木枠の周りにトタン板を当てる(土の漏れ込み防止のため)。木枠の周りにを盛り上げる。これは外部からの熱を遮断するため。


木枠をセット


木枠の周りにトタンを当てる


周りに土を盛る


次に、蓋を製作 厚さ1mmのアルミ板を切断し、両面に日本から持参の黒色のペイントをスプレー。
赤外線放射率0.96のスグレモノなのだ。 このアルミ板の周囲に木のフレームを付け、木枠と蝶番で留めれば、蓋のでき上がり。

次の作業は庫内用PETボトルの水詰め作業。 500ml のPETボトルに水を450mlほど入れる(凍結しても割れないように空間を設ける)。
墨汁を垂らして、栓をすればでき上がり。 墨汁で黒くするのは、赤外線放射率を高くするため。

19時、夕日が地平線に沈む。完璧な地平線なので、夕日がやけに大きい。
雲が全く無いので、夕焼けはほとんど無い。
やがて日没。バギーさんの奥さんの料理と馬乳酒でパーティーが始まる。

馬乳酒いうのは文字通り馬の乳を軽く発酵させた飲み物。 アルコール度は低い(3%くらいの感じ)。ヨーグルトを薄くして酸っぱくさせたような味。 夏だけの飲み物で、モンゴルの人はとに角よく飲む(1日1リットルは軽い)。 麻生は茶碗一杯、他の4人は10ccくらいしか飲めなかった。

 

パーティーが終わって宿泊用のゲルに移動。ここで一同唖然として空を眺ることになる。とにかく星がすごい地平線まで星が一杯、ということは完全な半球状のプラネタリウム。地平線近くの北斗七星がやけにでかい。天ノ川もくっきり見える。伊藤は完全に涙目。
石井は「これは宇宙だ!」と呟いている。 

星に酔って、ゲルに到着。しんしんと冷え始めたが、薪ストーブの周りだけは汗ばむほどに温かい。ロウソクを灯し、薪ストーブを囲み、麻生持参のワイ
ンを飲みながら、深夜まで話は尽きない。

夜空の写真を載せるつもりだったが
撮影失敗(ザンネン!)
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空想で補ってください


宿泊したゲル
白い外布の下は厚いフェルト


ゲルの内部
仏壇のような場所


ゲルの内部
藤村にはチト狭い


薪ストーブ
3,500円のスグレモノ!
調理はこの上でする

10月4日9時、朝食。 バギー奥さんの手作り料理は野菜が豊富。 モンゴルでは野菜は貴重品のはずだ。 気使いが心にしみる。
「お茶」と言えば、モンゴルで羊のホットミルクのこと。 お湯を混ぜて薄くし、少し塩を入れる。 馬乳酒と違って、こちらは全員No Problem。

10時、作業開始。 前日に墨汁煎りの水を詰めたPETボトルを庫内の床面と壁に配列。 全部で約200個、つまり、約100リットル。
PETボトルが崩れないように、木で支えを作る。 

アルミ板の上には
PETボトル製の断熱層を設ける。 これは上側をカットしたPETボトルを繋いだもの。
PETボトルの赤外線透過率は約0.7。 日本では厳しいが、空が澄んだモンゴルなら、これでもイケルと藤村は計算している。
赤外線透過率の高いガラスを2枚使えば、効率は高まるが、コストも高くなって遊牧民の手が届かないものになってしまう。
因みに、モンゴル国内にはガラス工場が存在しない。

PETボトルはウランバートルで捨てられ放しなので、只で手に入る。
因みに、500ml のPETボトル入りミネラルウォーターの価格は日本円換算16円。 大卒初任給7千円ということを考えると、大変に高い。
ついでながら、ガソリン1リットルは65円、軽油は75円(手間が掛かるガソリンの方が安いから不思議)。 水よりも高くて、日本よりも正常?

11時、藤村と麻生は、ウランバートルに移動。 JICA(国際協力機構)のモンゴル日本センター四釜所長訪問。
四釜さんには、昨年12月にウランバートルで非電化セミナーを主催していただいて、お世話になっている。
                                                                        
15時、土の上に石を敷いて、
非電化冷蔵庫完成冷蔵庫アップ写真)。 予想以上にゲルと調和。 一同しばしウットリと見惚れる。


キャンプマネージャーの子供
3歳と5歳。この女の子がメチャ可愛い。

クリックで拡大写真
完成した非電化冷蔵庫
周りの石は土飛散防止のため

クリックで拡大写真
蓋をあけたところ
黒い水を充填したPETボトルが見える

15時、ソーラークッカー組み立て開始(完了は深夜に及ぶ)。 2種類を用意してきた。
一つは「工房あまね」の滝沢さん製作のパラボラ式の本格派。 黒い紙が1秒で燃え始めるというスグレモノ。 価格は31,290円。
もう一つは、遊牧民用(特に、羊乳の殺菌用)に藤村・石井が作った2次元放物面の簡易型。 性能はイマイチだが安い(5千円くらい)。

16時、5組の夫婦来訪。 バギーさんの友人で、国家公務員・教師・鉄道会社職員等のインテリ組。 
陽気な人たちばかりで、こちらまで愉しくなる。 非電化冷蔵庫を見に来たのだと言う。 素直に感謝してくれて気持ちがいい。
急遽、ウォッカ&羊肉パーティー。 石で焼いた羊が山盛り。 塩が降ってあるだけだが旨い。 モンゴル勢は日本勢の3倍は食べる。


ウランバートルへの途上
車はしばしば羊の群れに遮られる


羊肉パーティー
左から麻生、石井、伊藤


日本勢では唯一
モンゴル勢並みに食べた吉井


ダンスに興じる麻生
相手は美人通訳のオドさん

19時、夕食。 5組の夫婦は、夕食もたらふく食べ、ウォッカや馬乳酒もシコタマ飲む。 妻の方が飲み、喋る(日本と同じ?)。
夕食後、ダンスが始まり、なんと12時頃まで続く。 とに角タフ。 モンゴルでは圧倒的に女性上位と聞いていたが、まさにその通り。 
ダンスのお付き合いは麻生に任せて4人はソーラークッカーの組立てに専念。深夜1時、組立て完了。麻生は12時に疲労困憊で帰還。
5組の夫婦は「非電化冷蔵庫を見に来た」と言っていたが、ダンスをしに来たように思えてならない。

22時より、非電化冷蔵庫の温度測定開始。 ここでトラブル発生。 データーの自動記録が作動しない。 止むなく、1時間おきに交替で読み取り・記録をする方式に変更。 大自然の中にに電子機器を持ち込んで罰が当たったのかもしれない。


10月5日
7時起床。 日の出(7:10)を鑑賞。 地平線からの日の出はダイナミックだ。

8時、非電化冷蔵庫の
温度データーを解析。 5点の温度が1時間おきに(自動ならぬ人動で)読み取られて記録されている。
庫内温度が下がっていない(タイヘンダ!)。 外気温度は最低ー2℃まで下がっているのに、庫内温度は9℃くらいに留まっている。
これでは、冷蔵庫ならぬ保温庫だ。 断熱は上手くいっているが、赤外線放射が上手く起きていないようだ。

原因は直ぐに判明した。 庫内の熱は、先ずアルミの放射板に放射され、アルミの板の熱は空に向かって放射されるという、2段階輻射方式をモンゴル版非電化冷蔵庫では採用している。 その上に、庫内には、熱容量が大きい水を充填したPETボトルが200個も設置してある。
そのために、庫内温度の下降は緩やかになる。 庫内温度が十分に下がらない内に外側のPETボトル表面(主に内側表面)に霜ができて赤外線放射を妨げていたようだ(外気の温度と湿度の観測データ及び目視データから判明)。 

まさか、冷蔵庫の外側表面に霜が着くとは!・・・・・・予想もしていなかった事態に瞬時戸惑う。
そこで方針変更。 冷蔵庫使用期間中で、霜が着く時期と着かない時期に分ける。 霜が着く時期の夜間だけは、外側PETボトルを使わないようにする。 今夜からは、この方式で実験してみることにする(ウマクイクト イイノダガ!)。


表面に霜が着いて不透明になったPETボトル!

  
この日の昼食は山羊の頭の丸焼き(ギョッ!)


乗馬を愉しむ石井(左)と伊藤

10時、ソーラークッカーの実験開始。 
本格派のパラボラ型は確かに凄い。 焦点に黒い紙を持って行くと1秒後には燃え始める。 葉山での実験とは段違いだ。
それくらい、モンゴルの空は澄んでいて、陽射しが強い証拠だ。
因みに、持参した赤外線放射温度計を空に向けて測定すると、昼間でもー30〜―40℃を表示する。
お湯を沸かす実験をしてみる。 1リットルのお湯が20分弱で沸騰し始めた。

問題は、モンゴル版簡易型だ。 結果はこちらも大成功! なんと黒い紙が5秒後に燃え始めた(日本での実験ではありえない! )。 
500ミリリットルの牛乳は20分後に沸騰し始めた。 目的は羊の乳の殺菌なので、沸騰までする必要は無い。70℃で十分だ。
イケル!。予想以上の結果に、一同感激する!

パラボラ型ソーラークッカー(工房あまね製作)
1点に集光する。

2次元放物面のモンゴル版簡易型
(非電化工房制作
) 1直線上に集光する。

モンゴル版簡易型 上から見たところ
ボトルの真裏に集光している

12時、バギーさんの友人6人来訪。 みなツーリストキャンプを経営している人たちだそうだ。 
非電化冷蔵庫を見にきたのだそうだ(ダンスをしにきたのじゃないのか?)。 

13時、古賀直樹さん(国際耕種勤務)来訪。 この方はJICAのプロジェクトでモンゴルに一月ほど滞在していて、明日帰国するそうだ。
サンシャンドという地方都市(ソムセンター)に井戸を掘ったり、遊牧民の現金収入を増やすための方策を練ったりするプロジェクトだそうだ。
その町には腎臓病を直す伝統的な療法(砂風呂+ラクダの乳)の病院があるそうで、この病院に非電化冷蔵庫を来夏に・・・・という話が進展。

14時、遊牧民ゲル#1訪問 バギーさんのキャンプから RV車で草原を走り回る。 道も無ければ、目印になる山も無い。 
これでよく迷子にならないものだと 感心する。 1時間ほど後、本当に着くのかなと心配になり始めた頃にやっと到着(ツカレタ!)。 
この遊牧民は、羊を千頭ほど所有する、比較的に裕福な家族だそうだ。 案内されたのは冬用のゲルだそうで、越冬用の家畜小屋(屋根と3方の板壁だけ)もある。 
因みに、1家族当たりで飼育している羊・牛・馬の数は、100〜2,000頭(平均は500頭)と、かなりの開きがあるそうだ。
この開きが貧富の差となっている。

夫は仕事で外出中。 色白で、セーターにズボン姿(つまり民族衣装のデールを着ていない)の奥さんにお話を伺った。 
私たちの遊牧民像といささか異なるので、その理由から聞いた。 色白の理由は日焼け止めを塗っているから――裕福でなければできない。
セーターにズボン・・・みんな、こちらの方がいいのだが、お金が無いからデールを着ているのだそうだ。
民族衣装に尊崇の念を抱いている伊藤は、この話にショックを受ける。

比較的に裕福な遊牧民であるために、〔太陽電地(120cm×40cm)+パラボラアンテナ+バッテリー+直流TV+省エネ電球(5W)〕のセットを所有している。 このセットの価格は、日本円換算で3万数千円。 羊10頭の売値に相当する。

今、「一番欲しいものは?」という問いに対しては「冷蔵庫」という答えが返ってきた。既に、照明とTVがあるかららしい。
このゲルでは、写真の揚げパンとお茶(羊の乳)をご馳走になった。いつ誰が来ても食事や飲み物を振舞ってもてなすのが遊牧民の習慣だ。


ゲル#1全景


主婦


TVが有った


伊東


羊乳酒の発酵


17時、
遊牧民ゲル#2訪問。 この遊牧民は、羊の保有数300頭。 一昨年のゾド(大寒波)で200頭の羊を死なせてしまったという、辛い話を聞いた。 遊牧生活を捨ててウランバートルに移住するのは、物質文明に憧れて‥‥ばかりではなく、ゾドの被害で遊牧生活を続けられず、ウランバートルへの移住を余儀なくされているケースも多いとか。 のどかでロマンチックなだけの遊牧ではないことを痛感。


日没が近くなってしまった


仏壇(?)。家族の写真が飾られている


調理器具


19時、夕食。 昼間に来訪した6人も同席。 ツァガンスム(ウランバートルから480km西)で温泉を経営しているバトドルジェさん夫妻も同席。夕食後はウォッカとダンス(ヤッパリ!)。 本当に踊りが好きな人たちだ。

21時、測定開始。 今夜も霜が着きそうなので、PETボトルを外した状態でテスト開始。 上手く冷えることを願う。

23時、ウィスキーのお湯割りで歓談中に、遊牧民の老人が突然私たちのゲルに入ってきた。 慌ててオドさんを呼んで通訳をしてもらうと「明かりが点いていたので入ってきた」のだそうだ。 これが、遊牧民流。 ウィスキーのお湯割りを振舞ったら、不味そうに飲んでいた。
なんだか愉快だ。


10月6日
7時起床。 データ解析 → 庫内の水の温度は3.6℃まで下がったことを確認(昨夕の出発点の水温は8.6℃)。 つまり約100リットルの水の温度を一晩で5℃低下させたことになる。 これは、暑くなる昼間にドアの開閉を頻繁にしても庫内を十分に低温に維持できる状態であることを意味する。 また、20kg、25℃の羊肉を入れた場合に、羊肉(比熱約0.7)の温度を焼く6℃まで下げられることを意味する。

冷蔵庫として十分に機能すると考えられる――つまり、テスト成功!! 一同安堵のため息をつく。
一番心配していた石井は、何度も温度計を確認して喜んでいる。 
庫内の水の温度と庫内空気温度は、この後、日中(最高温度27℃)も4℃以下を維持し続けることも、後で確認された。

10時、ハスタイ国立公園(キャンプから150km西方)で野生馬見学。 広大な草原でのんびりと草を食む姿は、一見してのどかだが、よく見ると狼の襲撃を警戒する緊張感も伝わってくる。 歩いていると馬の頭の骨がころがっていたりして、粛然となる。

さらに西方に60km、deer stone(鹿の姿が刻まれた扁平な石)や多くのtomb stone(小型墳墓)、stonehenge(巨石柱群)を見学。
小さな砂漠で昼食(暑い!)。 メニューは持参のサンドイッチと韓国製インスタントラーメン(辛い!)。
食後、石井と伊藤は、砂風呂を体験。 モンゴルでの伝統的な健康法だそうだ。石井いわく「身体に活力が蘇った!」


野生馬


Deer Stone


砂風呂を愉しむ伊藤、石井。バギー(右から)

15時、遊牧民ゲル#3訪問。 夫婦で歓待してくれる。 この夫婦は本当にいい人だ。 遊牧民の人たちは、総じて素朴で陽気なのだが、この夫婦はひときわ素朴で陽気だ。 「写真を撮ろう」と誘うと、一張羅(?)のデールに着替えてくれた。 


夫妻と一緒に、左から伊藤、石井、藤村、麻生、吉井


この夫妻の人柄は素晴らしい!

17時、遊牧民ゲル#4訪問。 ここでは5家族がグループを組んで暮らしている。 ゲルは別々だが、仕事は助け合いながら行っている。 牛・馬・羊・山羊を合せて千頭も飼育している家族もいれば、百頭だけ(但し、この人は遊牧民の間では有名な馬のブリーダーなのだそうだ)という家族もいる。 5家族のほとんど全員が集まって、熱心に会話に加わってくれた。 

「一番欲しいものは?」という質問に対して、「
井戸、その次は冷蔵庫。TVや照明はその次」という意外な答えが返ってきた。 
TVや照明(のような快適・便利)は我慢すればいいだけだが(エライ!)、井戸は生産性に繋がるから優先されるべきだ‥‥という、まさに見識。年間降雨量100mmのモンゴルでは、牧畜のための水場を求めて数十kmも家畜を移動させねばならないという不合理がある。
100m掘れば地下水があるし、生産性を挙げるための投資だから、それだけのお金は共同で出せる。 しかし揚水ポンプの電力が8kw――こんな電気を起こす太陽電池や風力発電装置は買えない――ここで行き詰っているのだそうだ。 

こういう話を聴いて発奮しない藤村ではない。 即座に計算して、500Wくらい(これなら太陽電池で賄える)で一日10トンの水を100m下から汲み上げる方法を考えつく。 「来年の夏には答えを持ってくる‥‥」という、いつもの安請け合いをして(そして、いつも後悔する)喜ばれる。

話を進める内に様々な問題が浮上してくる。 例えば
薪の問題。 極寒の地であるために、ほとんど年中ストーブを焚き続ける。 牛馬の糞を乾燥させたものだけでは足りないので、薪を大量に消費する。 1家族1日平均30kg(年間の平均)の薪を使用するそうだ。 薪をどこから持ってくるかというと、十km先でも百km先でも木さえ生えていれば出かけていって取って来る、幼木でも刈り取るから、年々遠くまで取りに行かねばならないと言う――(極寒の地では命がけだから仕方無いことだが)かくして砂漠化は進行する。 こういう話を聴いて発奮しない藤村ではない(よく発奮する!)。 また計算して‥‥‥(以下省略)‥‥工夫すればできそうなことがたくさん有る。 この問題には全員が発奮。 「どうすれば薪の使用量を4分の1に減らせるか?」‥‥‥夕食後、深夜まで議論が続く――答えは見つかった!(実験結果がでるまではナイショ!)。


全員が熱心に議論に加わってくれた


素朴で陽気な人たちばかり


刈り取ってきた木。後方は乾燥中の牛糞


10月7日
7時起床。 データ解析 → 庫内の水の温度は3.2℃まで下がったことを確認。 この温度は日中、頻繁に蓋を開閉したにもかかわらず3℃台を維持し続けた(最高3.6℃)。

13時、
見学会開始。 遊牧民の人達が集まり始める。 馬で1時間くらい離れた処から来てくれた人もいる。
先ずは、
非電化冷蔵庫の説明 熱心に聞いてくれるが、ピンと来ていない様子。 この冷蔵庫で冷やしたミネラルウォーターを飲んで、あまりの冷たさに驚いてからは急に真剣になる。 質問や議論も活発になって、「12万トゥグルグ(日本円で1万2千円)なら買う」という結論に至る。 「見てくれと移動のし易さをもっと工夫してくれ」という辛口の意見も出てきた。

次にソーラークッカーの説明。 初めて見たという人ばかりなので、黒い紙を1秒で燃やしてみせて驚かす。 パラボラ型で沸かしたお湯でコーヒーを淹れたり、カップラーメンをご馳走したり(これが好評)する内に、ソーラークッカーに馴染んでくる。 次に、モンゴル版の簡易型で牛乳を沸かして飲んでもらいながら、「これで満足か?」という会話を進める。 「5万〜8万トゥグルグ(日本円で5〜8千円)なら買う」という結論に至る。 

太陽電池も展示して説明。 太陽電池については全員がよく知っている。  
「高くて(ナカナカ)買えない」ということと、「売り放しで、故障しても面倒をみてくれない」という問題意識(というよりも現状への不満)が強い。
「バギーさんのような、逃げも隠れもしない人が、品質のよいものを売って、アフターサービスもきちんとする」という提案が(驚きをもって)支持された。 当たり前のようなことが、未だ当たり前ではないようだ。

見学者が続々到着。 20歳代の若い遊牧民も加わる。 先日来訪のツーリストキャンプ経営者たちも到着。賑やかになってきた。 


非電化冷蔵庫の説明を熱心に聴く

冷蔵庫の中を見る

中を覗きながら議論が始まる

ご婦人方もおめかしして参加

ソラークッカーの説明

ソーラークッカーについて議論が弾む


16時、
コンサート 来場者と日本からの5人への感謝として、バギーさんがコンサートを催してくれた。 
石井が(なんと)ホーミー(喉笛)が好きで以前から練習していることや、 藤村(チェロ暦40年)がモリンホール(馬頭琴)に興味を持っていることがバギーさんに伝わっていたために、知り合いの名人(有名なプロ)を招いてくださったらしい。 
ホーミーというのは、低音の地声を出しながら高音のメロディーを喉の奥で鳴らすモンゴル独特の音楽。 人間の喉から出るとは信じられない高音の美しいメロディーが流れる。 実演を初めて聴いた石井は唖然として、開いた口が塞がらない。 本職はミュージシャン(ドラマー)の石井もかなり達者にホーミーを演奏できるのだが、高音は未だ出せない。 演奏の後で「どうしたら高音のメロディーを出せるのか?」と石井が質問すると「先生につきなさい」の一言でチョン――立ち話で教えられるほど簡単なものではない‥‥ということなのだろう。 石井も納得。


左からホーミー、角笛、馬頭琴


馬頭琴を弾きながらホーミー演奏


この人の馬頭琴は上手かった

 19時、夕食。 今回の現地テストの成功を祝って乾杯。 バギーさんから感謝の気持ちを籠めて5人にプレゼント。 藤村は立派な馬頭琴を頂いて感激。 夜中の3時まで練習(こういう風に調子に乗って頑張るので体調を崩す!)―― 簡単な曲なら弾けるようになった。 同室の麻生はこの間熟睡。 鼾と馬頭琴のへんな合奏が夜更けまで続く。


10月8日
、バギーさんの奥さんや、仲良くなった子供たちに送られてキャンプを出発。 ウランバートルに移動。

国際市場に出かけて、太陽電池や風力発電装置、電気製品等の販売の実情を視察する。 
太陽電池とバッテリーとコントローラーのセットが日本円換算で3万円くらいで売られている。 オール中国製。 確かにアフターサービスとは縁が無さそうな売り方がされている。 
シャープ製のDCカラーテレビ(直流12Vで作動する)が数千円で売られている。 直流好きの藤村はこれを買って帰りたかったが重そうなので断念(日本では手に入らない)。 
5WクラスのDC省エネ電球が500円くらいで売られていた。 中国製で怪しいが、 軽いし安いのでタクサン買った。
石井は民族衣装(空色のデールにオレンジ色の帯)を購入。 後日談だが、渋谷で催されたコンサートでこれを着て演奏――受けたそうだ。


国際市場全景


風車と太陽電池


水差しを値切っている藤村(左オドさん、右店員)

10月9日帰国。 7時発のモンゴル航空機。 意外なことに定刻に離陸して定刻(日本時間12時30分)に成田着。 
問題はここからだった。 台風22号の影響で電車がストップ。 自宅に辿り着いたのは深夜だった(ツカレタ!)。

かくしてモンゴルの旅は完了。 充実した8日間だった。 一生懸命に世話をしてくださったバギーさんと奥さんに心から感謝!
真剣に通訳をしてくれたオドさんにも感謝。 打ち解けて歓迎してくださった遊牧民の人たちにも感謝、

このプロジェクトは、来年夏に何軒(何十軒?)かの遊牧民ゲルに冷蔵庫を実際に設置することから出発して、羊乳殺菌、暖房、井戸‥‥‥4年(あるいは十年?)くらいの長い――しかしやりがいのある――仕事になりそうだ。 若しかすると、少なからぬ人に希望を与えることができるかもしれない(ホントカナ?) 

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