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モンゴル国立科学技術大学での講演要旨 「Leap
Frog(跳び蛙)
理論のモンゴルにおける実践」 私は日本人の発明家の藤村です。 先ず、写真を何枚か見ていただきたい。
これは何だと思いますか? 勿論ご存知ですね。これは電気冷蔵庫です。
この写真を見てください。これは私が発明した非電化冷蔵庫です。ちゃんと冷えますが、電気はまったく使いません。電気を使わないで冷えるはずがないではないか‥‥と、日本では初めは、みんながインチキだろうと疑いました。この非電化冷蔵庫は環境を悪くする物質はなにも使っていません。動く部分はありませんから、10年でも20年でも使い続けることができます。 しかし、高価です。どれくらい高価かと言いますと、電気冷蔵庫と同じくらいの値段です。もっとも、電気冷蔵庫と同じくらいに大量生産すれば、電気冷蔵庫の半分以下の値段にはなります。それでも、モンゴルの遊牧民の人には高すぎます。
次の写真をみてください。これも非電化冷蔵庫です。昨年の夏にモンゴルでバギーさんのツーリストキャンプのゲルに設置したものです。日中は30℃くらいまで外気の温度は上がりましたが、冷蔵庫の中は4℃以下を保ち続けました。さっき、心の中でインチキだと思った人は、バギーさんのツーリストキャンプまで見に来て自分で確かめてみてください。インチキでないことが分かります。この非電化冷蔵庫は放射冷却(Radiation
Cooling)の原理を使いますから、空が澄んでいるほどよく冷えます。実は、この写真のような簡単な構造では、日本ではほとんど冷えませんが、モンゴルでは、よく冷えます。 この非電化冷蔵庫の値段は羊2頭分です。この値段なら遊牧民の人たちの手に届きそうです。実は、一昨年にモンゴルに来たときに、遊牧民の人たちに、幾らなら買えるか?という話を予め聞いてあります。彼らの答えは、羊2頭分なら買えるし、是非買いたい‥‥ということでした。 つまり、この非電化冷蔵庫は、@ちゃんと冷えるA電気を使わないB(遊牧民の人が買えるくらいに)安価C環境に悪いものは使っていない‥‥という4つの特徴を持っています。この表を見てください。先ほどの電気冷蔵庫と比較してみました。 電気冷蔵庫と非電化冷蔵庫とはそれぞれ対照的な4つの特徴をもつことが分かりますね。 実は、非電化冷蔵庫にはもう一つ、5つ目の特徴があります。モンゴルの起業家がモンゴルで作って売ることができるということです。羊2頭分で売っても、モンゴルの企業家が損をすることは有りません。電気冷蔵庫をモンゴルの起業家が作って売ることは困難ですね。頑張れば作れるかもしれませんが、中国製の大量生産品と価格を競争して勝てる見込みは薄そうです。この5つ目の特徴を加えた表を見てみましょう。 お分りですね? 電気冷蔵庫は遊牧民には手が出ない上に、都市の人も輸入品を買うしか無い。 モンゴルに産業も生まれなければ、雇用も生まれません。普及すればするほど、環境は悪くなります。 非電化冷蔵庫はどうでしょうか? 遊牧民でも買うことができます。モンゴル国内でモンゴルの起業家が作ることができます。 モンゴルに産業と雇用が生まれます。いくら普及してもモンゴルの環境は悪くなりません。 今年、この非電化冷蔵庫をモンゴルの起業家のバギーさんが実際に作って遊牧民やツーリストキャンプに販売します。私たちはお手伝いするだけです。発明の権利はバギーさんに許諾します。私は1トゥグルグも貰いません。 この写真を見てください。これはソーラークッカーというものです。 太陽の光を中心に集めますから、高温になります。黒い紙を中心に持ってゆくと、ほとんど瞬間に火がつきます。この大きさのソーラークッカーですと、1リットルの水が20分で沸騰します。モンゴルは空気が澄んでいて陽射しが強いので、日本では30分掛かるのに、モンゴルでは20分で沸きます。 しかし、このソーラークッカーは高価です。日本のお金で3万円(30万トゥグルグ)もします。みなさんは安いと思うでしょうが、遊牧民の人には手が出ません。
この写真を見てください。 これは私が、遊牧民の人でも買えるようにと考えて作ったものです。 羊1頭分くらいで買えそうです。次の写真を見てください。昨年の夏にこのソーラークッカーで実際に水を沸かしたり、羊のミルクを殺菌して遊牧民の人たちに見せているところです。遊牧民の人たちは、羊のミルクを余らせて腐らせています。若し、安価で簡単にミルクを殺菌することができれば、都市に運んで現金収入が生まれるかもしれません。勿論、このソーラークッカーも、モンゴルの起業家がモンゴルで作って遊牧民に売ることを想定しています。 今年、私はモンゴルに2週間滞在します。自分の弟子たちを20人ほど引き連れてきました。全員が自費参加です。 今年のテーマは4つ有ります。1つ目、先ほどお話した、非電化冷蔵庫の製造と販売のお手伝いです。実際に作って売るのは、モンゴルの起業家のバギーさんです。2つ目のテーマは、遊牧民の人たちの暖房用の薪の使用量を減らす試みです。日本にいる間にある発明をしてテストをしてみました。これから実際のゲルでその効果を試してみます。薪の使用量を4分の1に減らしてみたいと思っています。 遊牧民の人でも購入できる金額で、かつモンゴルの起業家がモンゴルで作って売れるようにしてみたいとも思っています。 遊牧民の人は一つのゲル当たり、1日平均30kgもの薪を暖房用に使用すると聞いています。ウランバートル周辺でゲルに住む人たちも大量の薪や石炭を暖房用に消費し、空も汚れていると聞いています。ですから、薪や石炭の使用量を減らすことは環境を守る上でも、経済的に楽になるという点でも意味が大きいかもしれません。それをモンゴルの起業家が作って、遊牧民の人たちでも変える価格で提供できれば、このモンゴルに新しい産業と雇用が生まれるかもしれませんね。 今年の3つ目のテーマは、モンゴルで非電化で野菜を作る試みです。時間が無くなってきましたので、詳しい話は省略しますが、やはりモンゴルの起業家が作って、遊牧民や都市周辺住民が買うことができることが前提です。 今年の4つ目のテーマは自家発電ランタンのテストです。 これが実物です。 2分間、このように紐を引くと、ゲルの中を1時間照らすことができます。ニッケル・カドミウウム電池のような厄介な重金属や化学物質を使っていません。ニッケル・カドミウウム電池のように、使っているうちに劣化してきて捨ててしまうものではなくて、半永久的に劣化しません。モンゴルは、自然の環境が守られている国です。日本のように工業化されて絶望的に汚染された国ではありませんから、日本で使われているような厄介な技術をこの国に持ち込みたくないというのが、私たちの考え方です。 みなさんは「Leap Frog理論」という言葉を知っていますか? 工業国の技術は、エネルギー多消費型・化学物質依存型の側面が強く、環境・安全の尺度で見ると、決して先進的ではない。こういう技術の移転によって、発展途上国が“豊か”になろうとしている。エネルギー多消費・化学物質依存の悪弊に染まってしまった工業国は、それを改善するのが、関の山だ。発展途上国は、悪弊にそまっていないのだから、そんな“後進技術”を真似する必要はない。工業国よりも先進の(つまり環境を悪くしない)技術を初めから導入してしまえばよい。そうすれば、経済発展と環境保全は矛盾しない。その“先進技術”が、工業国に移転されると、工業国の環境もよくなる‥‥‥工業国よりも(技術は)向こうに跳んでしまう――リープ・フロッグ(跳び蛙)というわけです。15年ほど前に誰かが提唱しました。しかし、15年の間、まったく実行されていません。 @
発展途上国は地球環境を守ることよりも、欧米的豊かさを実現することに熱心 A
Leapするには発明が必要。しかし発展途上国は発明が苦手 ――この2つが大きな理由です。一方、欧米的物質文明はお手本も、(工業国からの)支援も有ります。欧米追随になってしまうのはいたし方ありません。 では、「Leap
Frog理論」を、このモンゴルで実現して成功させるには、どうしたらよいでしょうか? 私が用意した答えは先ほど実例でお話したとおりです。 環境によいものを、モンゴルの起業家が作ってモンゴルの人が買う。必要であれば、工業国の発明家が手伝う。このようにすれば、この国の環境も文化も壊さずに産業と雇用を生み出せる可能性が有ります。私は、工業国の発明家の義務だと思っています。なぜかと言うと、地球の環境を悪くしたのは紛れもなく工業国ですし、環境を悪くするものを発明したのは、紛れもなく工業国の発明家だからです。 私がイメージしている、もう一つの答えは、環境に良いものを、モンゴルの人が作って、日本の消費者が買う。これは、私のイメージを描いてみた図です。
みなさんの中で、なにかヒントになるアイディアがありましたら、私に知らせてください。 私の話を聴いて、勇気が沸いた人がいらっしゃったら幸いです。発明家の仕事は人を驚かせることではなくて、人に勇気と希望を与えることだからです。 |
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