99年11月24日 / 「発明で、蛙を跳ばしてみませんか?」

  環境問題に関わる世界中の人々のバイブルがあります。 「地球白書」です。 レスター・ブラウン博士が主宰するワールド・ウォッチ・インスティテュートが、1984年(私が起業家に転じた年です)から毎年発行しています。 世界のオピニオンリーダーと言われるブラウン博士は、知的で穏やかな、人を柔らかく包み込むような、魅力的な紳士です(1989年に初めてお会いして以来ぞっこんです)。 ブラウン博士が、地球の環境に関して強く憂いを表明していることの一つが「環境における南北問題」です。 (北側=先進国いわく)「発展途上国が発展すると、地球環境がもたないから、発展しないでくれ‥‥‥」、(南側=発展途上国いわく)「これまで環境を悪くし、現在も悪くし続けているのは、先進国ではないか。環境を犠牲にして自分たちだけ豊かになっておいて、われわれには貧しいままでいろと言うのか?」‥‥‥という、あれです。 この、悩ましくも深刻な「南北問題」に対するブラウン博士の答が、有名な「リープ・フロッグ(跳び蛙)理論」です。

  ブラウン博士の「リープ・フロッグ(跳び蛙)理論」とは、こうです。 先進国の技術は、エネルギー多消費型・化学物質依存型の側面が強く、環境・安全の尺度で見ると、決して“先進”ではない。 こういう技術の移転によって、発展途上国が“豊か”になろうとしている。 「南北問題」の根源がここにある。 エネルギー多消費・化学物質依存の悪弊に染まってしまった“経済先進国”(=環境技術後進国)は、それを改善するのが、関の山だ(これをして、世界一の環境技術大国と言っている国があるぞ!)。 経済発展途上国は、悪弊にそまっていないのだから、そんな“後進技術”を真似する必要はない 。経済先進国(=環境技術後進国)よりも先進の(つまり環境を悪くしない)技術を初めから導入してしまえばよい。 そうすれば、経済発展と環境保全は矛盾しない。 その“先進技術”が、経済先進国に移転されると、経済先進国の環境もよくなる‥‥‥経済先進国よりも(技術は)向こうに跳んでしまう――リープ・フロッグ(跳び蛙)というわけです。 世界中の人が膝を打ちました――「なるほど!」。‥‥‥しかし、まったく実行されていません。

  “環境海援隊”という、私が代表幹事を仰せつかっている団体の会合で、この話をしたところ、富野揮一郎さん(龍谷大学教授。環境海援隊顧問。逗子市池子の米軍弾薬庫跡地への米軍家族住宅建設に反対して、池子の緑を守るために立ち上がって市長に推され、全国に勇名を馳せた方。私も逗子市の住人で富野さんを応援した一人)から反論。 「たとえば、中国のある町では、水牛の糞から、肥料と殺虫剤を兼ねたものを作り出した。化学物質を一切使っていないから、安全で環境にも悪くない‥‥‥その他、実例たくさん‥‥」――一降参! 前言撤回。まったく実行されていないわけではありません。

  ここまでは、ブラウン博士の理論。ここから先は、私の便乗アイディア。 「向こうに跳んだ発明」―― つまり、環境・安全の尺度で、経済先進国よりもずっと先進の発明をジャカジャカ生み出して、それを発展途上国から実現してみたらどうでしょう。 例えば、洗濯機。 現在の方式の電気洗濯機が発展途上国にも普及したとして、電気と水と合成界面活性剤の影響で地球がもたなくなるのは、私の計算では5億台(電機メーカーさん、マーケットを5億台以上には成長させないで!)。 そこで、私の発明した洗濯機―--電気は一切使わず、水もちょっとしか使わず、何よりも合成界面活性剤を全然使わないでも、同じくらい汚れは落ちます。 値段は格安。 でも、お母さんにちょっとだけ力仕事をしてもらいます。 だから経済先進国では絶望的に普及しませんが、発展途上国なら希望はあります。―――これはほんの一例。 発明家のみなさん、どうですか? “経済先進国で実用化される発明”という制約を取っ払ってしまったら、急に視界が開けてきたような気がしませんか?

  蛙が跳びません。 ブラウン博士の「リープ・フロッグ理論」がほとんど(富野さんに叱られるから、“まったく”とは言わない)実行されない一番の理由は、“発明”が足りないのです。 発展途上国の方々は“発明”が苦手のようです。 私が「発明工房」を始めた理由の一つは、環境や子供を守る発明を生み出して、蛙を跳ばしてみたかったからです(誇大妄想と言われそうですね。フン、無視するぞ!)。 いくつか、ストックがたまりましたので、発展途上国にアプローチ開始です(相手にされないだろうな――でも挫けないぞ!――いや挫けるかな!)。

  先進国の発明家のみなさん(つまり皆さんのこと)! 蛙がとぶような発明をして、一緒に蛙を跳ばしてみませんか?