2000年8月12日 / 「起業家のマーケッティング」

 「ラブホテルに新商品を売り込みたいので、アドバイスを‥‥」と、起業家Kさんに頼まれました。 昔(12年前)、ラブホテルに空気清浄機を販売して、シェアー100%を実現した噂話を聞いたのだそうです。ラブホテルに行かれた方はご覧になったかもしれません(空気清浄機どころじゃなかったか‥‥)。 次のような話をKさんにして差し上げました。

 病院とか、老人ホームとか、保育所とかの空気を何とかして差し上げよう‥‥と次々に考えていった一つがラブホテルでした。 体臭が出やすい活動をする場所だそうで、前の客のニオイが残って困っているのだそうです。一人で(本当ですよ!)客として、行ってみました。設置場所と性能のチューニングを工夫すれば、ドラマチックな効果を出せることが確かめられました。“ドラマチックな効果”は、起業家のマーケッティング―――「新しいモノを、新しいヒトが、新しいヒトに売る」―――では必須条件のような気がします(これが第1のポイント)。

 次に、業界のメカニズムを研究しました。ニオイが消えれば5万円は安い(と感じる)が、過去に効果の無いモノばかり売りつけられて懐疑的になっていること(「また騙しにきたのか!」‥‥)、業界リーダーのA社が導入すると右倣えになること、情報は某業界誌から得ていること、オーナーよりも店長に実質決定権があること、出入りの業者は存在するが新商品販売には不向き(楽に儲かることしかやらない)なこと‥‥‥メカニズムがシミジミ解りました(ここが第2のポイント)。

 そこで行動。業界リーダーA社の基幹店(澁谷店)を直撃。行って驚きました。若いカップルが手を繋いで、列を作って順番待ちをしているのです(エッ!)。 顔から火が出るような恥ずかしい思いをこらえて――42歳の白髪頭が恥ずかしかったのではなくて、私だけパートナーがいなかったのが恥ずかしかったのですが――私も列に並びました。1時間ほどで私の番、部屋代を払って(一人の部屋で)店長に面談を申し入れて、1週間のテストをお願いしました。客から文句か‥‥と思って部屋に入ってきた若い店長は、面食らっていましたが、意気投合して、快くテストを引き受けてくれました。代理店に任せたのではこうはいかなかったでしょう。 社員に行かせても店長は感激しなかったでしょう(初めは自分でやる‥‥これが第3のポイント)。

 1週間後に再訪問しまし。渋谷店への導入を、首をかけてでも社長と掛け合う‥‥と、若い店長は約束してくれました。 程なく、A社全店に導入が決まり、この実績を某業界誌に掲載してもらいました。 流通への働きかけは、それからです。掲載誌(コピーではなく本物)と機械サンプルを携えて出入りのホテルを訪問し、テストをお願いしてもらう(ホラ「楽にもうかるでしょ!」‥‥)――これでほとんど成約。 業界シェアー100%‥‥‥というわけです。 

 この話(エンエン2時間)を聴いた起業家Kさん、「ワカッタ!」と、喜んでお帰りになりました。 “大企業流のマーケッティング”とは異質の、“起業家のマーケッティング”を精一杯伝授して差しあげられた‥‥といい気分になっていたのですが、2日後のKさんからの電話――

某業界誌の名前は何だっけ‥‥」――で、がっかりしました。 エンエン2時間、大企業流のマーケッティングを教えて上げてしまったのかしら!