2000年8月5日 / 「ウォーターベッドで胎児に戻る

  ウォーターベッドを見直しました。ロクなものではない‥‥と思い込んでいたのですが、ロクなものでした。乙川健一さんという、ウォーターベッドの申し子のようなオジサンが巨体を揺らして講釈してくださるのを、揺れながら(つまりウォーターベッドに横たわりながら)聴いて納得しました。20年前に体験した時の薄気味悪い印象が、3時間の講釈で180°変わりました。

 ウォーターベッド――ご存知ですよね、水が入ったビニール袋の上に寝るアレ――と(実は)思い込んでいましたが、“アレ”とは似て非なるモノでした。“アレ”は水(または空気)がパンパンに入ったゴムボートみたいなシロモノで、お世辞にも快適とは言えないのですが、“コレ(昨日体験した乙川さんのベッド)”は、全身が包み込まれるように支えられて、水面にフワッと浮いて漂っている――胎児に戻ったような感じ(胎児の時のことを覚えているわけでもないけれど)――快適の極みです。 “アレ”と“コレ”の違いは、張力と浮力の違い――パンパンに水や空気が入ったビニール袋の上に寝ると、体重は(主に)ビニール袋の張力で支えられますが、適切に設計されたウォーターベッドでは体重は水の浮力で支えられます。 設計のポイントは、ビニール袋の“たるみ”のようです。

 “たるみ”が十分にとってあると、浮力と重力がつり合う処まで身体が沈みます。固体の張力ではなくて、流体の“浮力”ですから、出っ張っている処もへこんだ処も、同じ圧力で支えられます(だから快適)。満杯にすれば9インチの厚さになるビニール袋に8インチ分の水を入れる‥‥‥これが、理想的な“たるみ”をつくる秘訣なのだそうです(ン?喋ると秘訣でなくなるぞ!)。 乙川さんのウォーターベッドは、表面はシワシワでまったいら、寝ると身体の半分くらいが沈んで心地よくつり合います。頭や首も原型(?)のまま、ほどよく沈んで、均一に支えられます(ウン、いい夢を見られそうだ!)。 シンプルなものですが、実にうまく設計されています。

 床ずれに苦しむ患者のために、ウォーターベッドは考案されたそうです。ヒントは、羊水に保護された胎児――150年も前のアメリカの話だそうです。 身体を均一の圧力で支えるので、毛細血管やその先の血液の流れを妨げません。床ずれしない理屈です。爾来、寝返りを打てない老人や病人にとっての福音となって今日に至るのですが、寝返りを打てる健康人にとっても安眠効果が大きいことも素直に納得できます。

 アメリカやカナダでは、3分の1以上の人がウォーターベッドを使っているそうですが、日本では100分の1くらい――乱暴な売り方やトラブルが原因で、納得よりも幻滅を多く与えてしまったのが原因――と乙川さんは解説してくれました。ウォーターベッドの普及をずっとリードしてきた乙川さんにとっては残念な出来事だったようですが、地道な努力が実って、この頃ではファンが着実に増えているそうです(15年かかって‥‥イイゾ!)。 

 ナマケモノ倶楽部のことを、以前にこの欄で紹介したことがあります(5月13日付け)。ナマケモノ倶楽部のテーマの一つは“スイング”。 ナマケモノが気の枝にぶら下がって揺れていることにヒントを得て、“スイング”の効能(脳の発達や精神の安定etc.)に思い至ったそうです。“スイング”を子供のブランコに留めずに大人にも‥‥というコンセプトで商品つくりを検討しています。 乙川さんの話を聴きながら、このことを思い出しました。 “スイング”といい、ウォーターベッドといい、なにか“ぬくもり”のあるいい話だと思いませんか?(ITも悪くはないけれど)。

       乙川さんのホームページは http://www.supershop.co.jp/ です

       ナマケモノ倶楽部の第4回ナマケモノセミナー(9月2日)は、ナマケモノ的発想‥‥と題して、私が喋ります(詳しくは http://www.sloth.gr.jp/をご覧下さい)。