2000年7月15日 / 「ピラミッドでも文鎮でもない‥‥SMART」
「ピラミッドはやめて文鎮にしたい」という、塾生の若手経営者Tさんの発言に対して、SMARTチームという選択肢も加えたら‥‥とアドバイスしました。企業組織のスタイルの話です。
大企業の伝統的な組織スタイルが“ピラミッド”。 変化が無く、成長する時代に適したスタイルです。 “階級”が重装備されて、上に登るほど権限と名誉と報酬が約束されますから、“階級上昇意欲”がモチベーションの基本です。成長する時代はポストが増えてよいのですが、成長が止まると困ります。ミドゥル(中間管理職)に権限が与えられますから、現場の情報は,経営トップまで上がってきません。トップの仕事は、“結果”を評価して、ミドゥルの人事を考えるだけ(言い過ぎかな?)。 変化の無い時代には戦略は不要ですから、情報も不要。これが一番“平和”なスタイルです(日本人は平和が好きなのです)。
変化の時代には、経営トップに戦略が求められ、戦略を立てるためには“情報”が必要なのですが、人づての(責任を伴う)情報は常に“遅くて不正確”ですから(無責任な情報は驚くほど速いのですが)、戦略を立てるスピードが変化に随いてゆけません。階級を上昇してトップになった人は(例外なく)調和型ですから、ただでさえ“戦略”は苦手の処へ、情報が“遅くて不正確”では、戦略の立てようがありません。
もう一つの伝統的なスタイルは“文鎮”。 零細企業は、ほとんどこれです。 隅から隅まで知り尽くしたオヤッサン(社長)が、全権限をもって取り仕切ります。 オヤッサンは実戦型ですから戦略は苦手の上に、忙しいので、戦略どころではありません。 社員数が多くなると、取り仕切れなくなるという問題もあります‥‥‥‥というわけで、“ピラミッド”も“文鎮”も、変化の時代には不向きです。
そこで、米国のベンチャー企業家たちが編み出したのが、“SMARTチーム”というスタイルです。 新鮮に感じたので、理論を組み立てる仲間に、私もちょっとだけ加えてもらいました(10年くらい前のことです)。 “SMARTチーム”というのは、経営トップの補佐官チームのことです。 英語でsmart は、“うんと賢い”というような意味で使われますが、“SMARTチーム”も、うんと賢い人(一般には若手)を社内から(中にいなければ外から)選りすぐって編成します。チーム長はいません。チーム員だけです。
“SMARTチーム”は、“ブロック組織”を前提にしています。ブロック組織というのは、プロジェクト単位のブロックのみで編成された流動的な組織です。全部のブロックがトップに直属となります。つまり、トップは全ブロックをしょっちゅう組み立て直し、戦略を与え続けなければいけませんから、“とてつもなく優秀”でなくては務まりません。 トップを“とてつもなく優秀”にするための補佐官が、“SMARTチーム”というわけです。 アメリカ大統領は全権限を握ってアメリカを(というよりは世界を)戦略的に統括していますが、大統領補佐官の有能さに依存していることは周知のことです。 この大統領補佐官と、“SMARTチーム”は、よく似ています。経営戦略に必要な情報を“速く正確に”集めます。職制に情報提出を求めることはしません(遅くて不正確だから)。 情報に基づいて戦略案を組み立てて、トップに素早く提示します。 経営トップは(大統領のように)存分に指導力を発揮します。
“ピラミッド”と、“文鎮”と、“SMARTチーム”の違いがお分かりになりましたでしょうか? “SMARTチーム”は、米国で成果が上がっている割には日本では知られていません。 日本向きではないと判断して、誰も“輸入”しないのでしょうか? しからば、日本向きの、変化の時代のスタイルを、どなたか“発明”してみませんか!