2000年5月6日 / 「中小製造業の時代」

 滋賀県大津市の、中小製造業の経営者10人のグループとお付き合いを始めました。全員が30才台の2代目経営者たちです。創業20年から40年、時代の変換点で創業者からバトンタッチされて、悩ましい立場のみなさんですが、「家業」を維持・発展させる意気に溢れた青年経営者ばかりです。(一般の定義では)起業家ではないのですが、(滋賀)起業塾と名付けました。延長線上の発想ではなく、「新しい時代に、新しい価値を発揮する」という発想――起業家の発想――をして欲しかったからです。これから半年間のお付き合いで、夫々の経営者が、「好き」で、「得意」で、「新しい価値を発揮」できる事業テーマを見つけ出せるか――リードして差し上げるのが、塾長としての私の役割ですが――とても楽しみです。

 「中小製造業の時代」――これが、1回目の講座の主題でした。「中小製造業受難の時代に何を太平楽な‥‥」とブーイングが聴こえてきそうですが、私は本当にそう思っていますし、そうでなければ困るとも思っています。 10人の青年経営者に申し上げたのは、こんな話です。

 一万人に一人しか相手にしてくれない“ユニーク”な!物を作ったとしましょう(本当の“新商品”は大体こんな処です)。大津市は人口20万人だそうですから、20人しか買ってくれない。20台では、定価5万円の物を作るのに50万円掛かるでしょうから、話にならない。滋賀県の人口は200万人だそうです。銀行から借金して営業マンを置けば、滋賀県全体を相手にすることができそうですが、販売台数は200台。定価5万円の物を作るのに10万円掛かりますから、上手くない。中小製造業ができるのは、ここまで。やはり、1万台単位で注文してくれる、全国銘柄の大企業の傘下に入ろう‥‥‥これが、“今まで”の話でした。

 しかし、大企業からの注文は先細りです。高度成長時代ではありませんから、大企業も“ゆとり”がありません。少しでも安い企業(必然的に、労賃の安い国)に注文を移します(義理と人情は、いまや懐かしい話)。 高度成長時代ではありませんから、何十万台も売れる新商品など、滅多なことでは出現しません(それを、数千社の大企業が争う、ワオッ!)。

 1万人に1台は、1億人なら1万台。1億人に情報を発信しようとすると、1億人分のお金が掛かりました――これは今までの話(大企業は相変わらず、これ)。これからは情報発信の費用は、数と距離には比例しません。一万人に発信するのも1億人に発信するのも、両方とも(ほとんど)タダ。だから、中小企業でも広く、遠くまで発信できます。ですから、1万人に1人しか売れない物でも、1万台売れる。1万台売れれば、中小企業にとっては“オンの字”です。 大企業は1万台では困ります。数十万台でないといけない。しかし、新商品でいきなり数十万台は、(これからは)大企業でも困難です。高度成長時代ではありませんから、消費は慎重です。消費者は個性を求めます。“全国で1万台”くらいの商品こそが、求められるのです。中小製造業の時代の始まりです。大企業受難の時代の始まりでもあります。

 「中小製造業の時代」の恩恵をこうむるには、得意技を発揮して(“得意”を広く定義し直す必要があります)、「1万人に1人」が、ぞっこん喜んでくれる物を生み出して、全国に発信することです(間違っても、1万人に1万人が喜ぶようなことは考えないことです――幸いに、大企業じゃないのですから)。「1万人に1人」は、とてもマニアックな人です。その物の価値を高く評価して下さるでしょう。無名企業でも気にしません。

その価値を(時には自慢して)広めて下さるでしょう。共感が生まれるかもしれません。

“共感がエネルギーを生む”時代が始まっています。面白いことが起こりそうです。

 中小製造業は(一般に)発明が苦手です。ですから、発明家の役割が重要です。「1万人に1人」がぞっこん喜んでくれる発明をして、それを全国100万社の中小製造業に提供して差し上げたらどうでしょうか? 「発明市場」が発明家と中小製造業の橋渡しの一環となるといいですね。

 大津の10人の経営者のみなさん、この話に大喜びしてくださいました。ちょっぴり自信が着いたようです。さあ、残り5ヶ月。各論で「ハッピーエンド」となるでしょうか? 素質の良さそうな10人ですから、私の責任も重大です。