「発明起業塾」で生み出す「事業になる発明」とは?
発明起業塾 公開講義
   
講師: 発明起業塾塾長 藤村 靖之 氏

  藤村氏 は、30年に渡る「発明家」人生の中で、実に1000以上もの発明品を世に出し、「事業家」としても数々の成功を収めてきました。一体その成功はどのような発想によるものなのでしょうか。

  「事業になる発明」の真髄が、「発明起業塾」にはぎっしりつまっています。今回の特集では、2002年2月27日(水)に大阪産業創造館にて行われた「発明起業塾」の公開講義の模様をお伝えします。ここでは、どうすれば発明性の高い事業、または事業性の高い発明を生み出す事ができるのか、その秘訣を垣間見ることができます。

1. 「発明」とは新しい組み合わせ


「発明」に必要なもの
…高度な知識、研究設備、IQ…?!

 いいえ、決してそうではありません。発明は、科学者が新しい原理を発見するのとは異なり、私たちが既に習ってきたこと(例えば小学校や中学校の理科の授業で)の「新しい組み合わせ」に過ぎないのです。だから、私たちが想像するほど難しい話ではないのです。

 <藤村先生の第538番目の発明品>
  一見ただの箱?ですが、これは「水が自然に冷える」というものです。水の自然対流を原理にしています。暖かいもの(水・空気)は上に行き、冷たいものはしたに行く、というのは誰もが知っていることです。ただ、「誰でも知っていること」をただ知っているだけなのか、それとも具体的に形に変える事ができるのか、これが大きな差になるのです。

 (藤村先生の発明については、バックナンバー「事業になる発明セミナー」に詳しく書かれていますので、興味のある方はそちらもどうぞ。)

 発明するならユニークなものでなければならない、ということではないのです。平凡なものこそ売りやすいのです。だから、ユニークに作れば作るほど、売れない、儲からない、事業が立ちあがらない。これが一番の問題点ですね。

 発明自体が難しいのではない。売れない、儲からない、事業が立ちあがらない、が問題なのです。

 お金がないから難しいんだ、という人もいるでしょう。しかし、藤村先生は言うのです。

 「ちゃんとした、事業性のある発明と、売れる論理(マーケティング)がきちんとしていれば、お金は必ず必要なだけ出てきます」 と。

 

藤村先生の例

16年前のことです。先生は、「30億円集まればいい研究ができていいかな」と思い、実際に30億円集めたそうです。当時は今と比べると、起業家にお金を出してくれる支援機関やベンチャーキャピタルは少なく、額にすると200分の1に過ぎなかったようです。それでも先生は30億円を集めることができました。

  なぜなら、お金を持っている人=投資家は、いつもお金を出したくてたまらないのです。 でも彼らは、事業になる発明とマーケティングが揃っていないと、売れないんじゃないかと思って投資しないわけです。

 したがって、問題はお金ではないのです。売れない、儲からない、立ちあがらない事業が問題なのです。

 では、どうしたらいいのでしょう?課題は山積みですが、最初の問題点としては「商品コンセプト」の立て方が挙げられます。
  つまり…
 これまで、たいていの人は、新しく商品を開発する際に、「自分の得意ともうけが重なる所」を選んでいました。
   例えば、これまで培ってきた技術力や販路といった長所を最大限に生かしてもうけにつなげるという方法です。

 今まではこれが成功の一つの型でしたが、今やこれではそうそううまく行きません。結局の所、発想がにたりよったりになってしまい、新しいものがなかなか生まれてこないし、また発展性にも欠けるからです。

 それでは、これからはどんな商品コンセプトが求められるのでしょうか。それは、

 社会的によいことと、自分の好きなことが重なる所

 に焦点を当てるのです。これは今までにない発想です。発明や事業を持続させるエネルギーにもなります。

 
2.基本は「すぐに」「何度も」やること

 
  それでは、発明に必要なのは何かというと、試行錯誤を繰り返すことです。平凡に聞こえますが、非常に重要なことです。

 藤村先生のように30年間にも渡って発明を行ってきた「大御所」でさえも、1回でうまく行った事はないと言います。平均15回です。文字通り試行錯誤です。普通はみんな3回か4回試してやめてしまいますからね。

 藤村先生の経験では、自分で「15回」を試行錯誤の基準軸に定めてから、発明がスムーズになったとのことです。基準軸を設定することで、5回や6回の失敗は当たり前と受けとめられるようになるんですね。

  新しい事を考えたとき、自分だけがこのアイディアをもっていると考えやすいですが、それは違います。
  ほとんどの場合、同時に世界中の誰かが同じような事を考えているものです。自分が考えるようなことは同時に何千人も考えているわけですが、その集団レースから抜け出すことができるのは、「考えたらすぐやる人」です。考えただけでやめてしまう人が圧倒的多数を占めているからです。

 このように「考えたらすぐやる人」が7、8回も試行錯誤を繰り返すと、3、4回でやめてしまう大多数を抜いて、一気にほぼ独走体制を確立することができるでしょう。

 問題は、この15回を何年で実現させようとするかです。事業化に向けて…となると10年も20年もかけているわけにはいきません。
  例えば3年くらいでモノにしたい、実現したいとすると、一サイクル(一トライ)を2ヶ月前後でこなしていくことになりますが、これが案外困難です。したがって、2ヶ月で一サイクル回す方法をまず発明しないとしょうがないわけです。こういうことを繰り返していくうちに、2、3週間で一サイクル回せるようになってくるのだそうです。


 藤村先生は昔、大企業の研究所に10年位いたのですが、その時つくづく思ったそうです。
 「大企業から発明は、絶対と言っていいほど生れないなぁ」
 
 先生は、「大企業から発明が生まれない100の理由」を考えてみたそうです。(「100もあるんです。100もあったらたまったもんじゃないですね(笑)」と先生は言います。)そしてその一つが、大企業では一サイクル一年、という単位で動いているということです。

 大企業は役所と同じで、3年やって芽が出ないとやめてしまう、つまり3サイクルでうまくいかなければやめてしまうのです。しかし、3サイクルでうまく行く発明なんてそうそうない、全く新しい事が3サイクルでうまく行くとは考えにくい、だから大企業から発明が生まれないのです。

 また、なるべくお金をかけずに試行錯誤することも重要なポイントとなります。(これもまた、大企業から発明が生まれない理由の一つになるのですが)

 というのは、1回1回にお金をかけてしまうと、お金が惜しくなってしまって、「うまくいくはずだ」と思い込んだり、こじつけたりしてしまいがちだからです。また、お金にまかせて事業を進めてしまう、ということにもなってしまうでしょう。一方お金がない人は、お金をかけずに実験する方法を発明せざるを得ないのですが、実はこれは発明家としては重要な素養の一つなのです。

 そして、失敗を素直に認めることです。失敗したら、その理由について素直に考えていかなくてはなりません。(この点で大企業は、「失敗しないフリ」をします)

 
3. 特許とマーケティングに秘密あり

 
「発明起業塾流」では、実際に商品を開発する前にすることが2つあります。
それは、まず特許を取ること、そしてマーケティングを徹底して行う事です。

 まず特許を出す
  
 発明には特許が不可欠です。しかし、長い間日本では、特許を取得するには長い年月がかかりました。2000年までは出願から登録まで、なんと7年もかかり、日本は明らかに特許後進国でした。発明や新しい事業といったものを重視しない風潮があったのでしょう。このように、日本における特許にまつわる状況は、他の先進国にはるかに遅れを取っていました。

 2000年までは、と書きましたが、それでは現在はどうなっているのでしょうか。いくらかは改善が見られたのでしょうか。 

  先生によれば、特許取得までにかかる期間は、「テクニックさえ知っていれば」ダントツで1位、にまでなりました。
先生は、最短で3ヶ月、長くても6ヶ月で必ず特許を取っていると言います。(もちろん先生でも、昔はひとつの特許に七年かかっていました)こういった変化が急に起こったのです。

 日本もようやく、半年くらいで特許を取れるようになる国にならざるを得なくなったという事です。この電子化の時代においては、パソコンと電話さえあれば、わずか数年前に比べると格段に短い期間で、しかもたったの21,000円で特許が取れます。

 このことが、発明や事業化の分野に大きな変革をもたらしたといっても過言ではないでしょう。なぜなら現在では、「特許を取ってから事業化」ということが充分に可能となったからです。

 一昔前は、特許を取るには先述の通り7年もかかり、そしてその特許も平気で侵害されることが 多々ありました。民事訴訟を起こせばさらに7.8年とかかります。このような状況下では、「特許が出てからやろう」と悠長なことは言っていられませんので、見きり発車せざるを得ません。とにかく製品化と事業化を進めることが大事でした。しかし、今は違います。
今は話が180度別になるんです。

 しかし、やはりテクニックを知らないと2年くらいかかりますので、このテクニックを磨くことが大きな差を生むといえるでしょう。(これは発明起業塾を受講して、勉強してくださいね)

 商品ができる前にマーケティングをせよ
    
発明起業塾では、「資金調達20の方法」「利益を上げる20の方法」というテーマの講義もありますが、それより何より重要なのが、ここで述べる「マーケティング」です。

 多くの人は、商品ができてからどう売るかを考えますが、本当はそれではいけないんです。最初から、どういう売り方をするか、売れるのかを考えるのが本当のマーケティングなのです。まだ子供もできていないのに子供の教育を考えるのはおかしいんじゃないか、まず産むのが先じゃないかと思われるかもしれませんが、実際に産んでみてからでは遅いのです。作るときにつっぱしってしまってはいけないのです。

 ただ、世の中にあるマーケティングの本は、既にいろいろな地盤のある人のためのマーケティングなのです。つまり、お金や営業基盤、顧客、知名度、有能な人材、営業所、代理店…こういったさまざまな要素を既に持っている人のためのマーケティングなのです。つまり、ほとんどは大企業向けの方法論というわけです。

 しかしこれは、貧乏起業家が新しいモノを生み出して、新しい人に売るためのマーケティング、ではありません。したがって私たちは、基盤や資源を持たない貧乏起業家がどうしたら儲かるのだろうか、ということを独自に考えて行かなくてはならないのです。

 これを、事業化する前に考え出してしまえば、後は発明に専念できます。発明には集中力がものをいいますので、欲望や不安、恐怖心が頭の中に渦巻いている状況では、決して良いものは産めません。先にも述べた通り、発明というのは「新しい組み合わせ」です。頭の中が自由でなければ、自由な組み合わせを行う事はできないのです。

 したがって、いかに頭の中をきれいにして集中力を発揮できる状況を作れるかがカギになります。

 この点で、インターネットはうまく活用すれば、心強い味方となるでしょう。


 というのも、 今までは、営業範囲が限られていたため、1万人に1人しか買ってくれないようなものは作ることができませんでした。
  しかし今はむしろ、人々はこういったものを求める傾向があります。そして、インターネットを使うことによって、日本中・世界中に散らばった「1万人に1人」に辿りつくことができるようになったのです。

 
4. 「発明起業塾流」とは

Sさんの例  

 藤村先生のお知り合いに、ある有名な会社を退職して、流体力学ベッド(工房)というのを発明したSさんという人がいます。この人は、「発明起業塾流」と名づけている方法そのままを使いました。

 Sさんは、きちんとした会社でまじめに働きながら、週に1回気の合う仲間と集まって、発明会議をやっていました。そしてそこで、発明品を24サイクル試行錯誤して完成させました。何を作ったのかというと、ベッドです。

 今日本で、約5000万人がベッドを使っているといわれていますが、そのほとんどが今のベッドに満足していないらしいです。(すごいマーケットもあるものです。5000万人が使っていて、そのほとんどが満足していないのですから)そこでSさんは、

   「夏は涼しく夜は暖かく、寝心地が良く、化学物質も無く、ダニもカビも繁殖しなく、安くて軽くて小さいベッド」

 というものが発明できたらすごいじゃないかと考えたわけです。このように、みんなが大喜びする商品コンセプトをまず作ってしまったわけです。

 つまり、「発明起業塾流」とは…

 商品コンセプトを練る(あるとみんな嬉しい)

マーケティング・事業戦略(どういう売り方をすると売れるのか)
↑実はこれが「発明起業塾」で
一番力を入れている部分なのです

特許を取る

試行錯誤(文字通り、何十回も繰り返す)

 という、新しい方法論と新しい出発をめざしたものなのです。  

 

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