人間は力があるようでも、電気の力には遥かに及びません。人間の力は瞬発値で100〜300W程度(相撲取りやプロレスラーは1kW程度)。一日中、必死で肉体労働しても精々1〜3kWh(キロワット時)=860〜2,600kcalくらいの仕事しかできません。石油1リットルの発熱量が約10,000 kcalですから、人間1日の仕事量は石油0.086〜0.26リットル分――重油なら5〜16円で買える量です(エッ!)。電気代ですと25〜75円くらい。丸一日体を使う代わりに数十円払えば、電気がやってくれるというわけです。私たちが、自分でやらずに電気に頼ってしまうもう一つの理由がここにあります。電力が安すぎるのです(この話、電力会社から喜ばれそう!)。電力が安いのは、石油が安いからです。石油が安いのは・・・・いまの内だけです。
ですから、(人力)自家発電は、電力使用量が大きいものにチャレンジしても無理です。電力使用量が小さい割には効果が大きいものに絞ってみてはいかがでしょうか。例えば、携帯電話の充電。携帯電話用のバッテリーは1Wh(ワット時)程度でフル充電できますから、(人力)自家発電でも苦痛を伴わずに充電可能です。懐中電灯やカメラや髭剃り機も大丈夫です。ラジオや時計や電卓は楽勝です。単3乾電池2本以下で動く電気製品なら大抵OKです。人間の力は小さいのですから、なるべく力を有効に使った(人力)自家発電のメカがよさそうです(そうしないと、自家発電が嫌われる!)。写真(a)は手で握って発電する方式――携帯電話の充電が主目的で作られていますが、指だけを使う発電ですので、ちょっと辛い。発電能力は1〜1.5W程度です。(b)は手巻きラジオと同じく、ハンドルを回転して発電する方式――手首を使うので、指だけよりは楽です。発電能力は1.5〜2W程度。(c)は紐を引っ張って発電する方式――腕全体を使うので、手首よりは楽です。発電能力は2〜2.5W程度(d)は足踏み方式。この方式ですと、携帯電話の充電くらいは愉しくできます。それでも発電能力は6.5W程度ですから、前述の人力パワー=100〜300Wに較べれば、まだまだ出し惜しみの範囲です。身体全体を使えば、もっともっと利用範囲を広げられそうです。
ただし、携帯電話用のバッテリーに、10Wの発電能力の充電装置で1Whの電力を充電するのに(計算とおりの)6分で充電できるかと言うと、そういうわけには行きません。その理由は、携帯電話に使用されている電池は急速充電ができないタイプのものだからです。充電可能速度は1〜2Wくらいですから、充電能力2Wのものでも、10Wのものでも30分〜1時間かけないと充電できません。
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