Question and Answer

(沖縄の金城さんより)
沖縄タイムの新聞でこちらのHPのことを知って見ました。冷蔵庫に興味があり見たのですが、私は原理については詳しいことは全くわからないのですが、沖縄では日中36から38度の気温は普通にあり、夜でも32,3度位はあると思いますが、そういった状況でも、HPにある冷蔵庫は使えるのでしょうか?沖縄は冷蔵庫はなくてはならない電化製品の一つです。一家に2台もってるところもあると思います(たぶん。。家はあります)メンテナンスの部分(中の水は入れ替えるのかとか・・)も知りたいのですが、教えていただけますでしょうか?

 
 熱が出て行く方(放射冷却)は外気温度にも空の澄み具合にも関係なく、放射面の温度のみに依存します。一方空からの輻射は空の澄み具合に依存します。完全に澄んでいれば、空からの輻射はゼロになります。沖縄は空気はきれいなのですが、海に囲まれているために、昼は雲が多いのですが、夜は星が良く見えます。総じて、放射冷却には有利と考えられます。
 一方、外気から熱が入って来る方は、外気温度と内部の水の温度の差に比例します。仮に水温を10℃と設定した場合、外気温度が38度の場合と、外気温度が25℃の場合とでは、温度差の比は28:15となって約2倍になります。ですから、断熱の度合いも2倍にしてやらなければ同じ効果は得られないということになります。
 断熱の度合いを2倍にすることは不可能ではないのですが、あまり合理的ではなさそうです。それよりは、非電化冷蔵庫を置く場所を工夫した方がよさそうです。日中の気温が38℃と言っても、場所によっては差があるはずです。家の北側で、照り返しが無く、風が抜ける処でしたら、30℃程度の場所はありそうです。京都の伝統的な建築様式である「町屋」では、家の中心に、一日中陽が当たらない中庭を造ったり、風の通り道を設けるなどして、気温が35℃でも室内を涼しく保つ(勿論、クーラー等は無しで)工夫をしていますが、同じ考え方です。
 中の水は入れ替える必要はまったくありません。この水を飲むわけではありませんので、問題は細菌が増殖し過ぎて、代謝生成物により、水がドロドロになって自然対流が損なわれることと、錆びが出すぎて、やはり水の自然対流が損なわれることくらいですが、水道の水をそのまま入れれば水道水中に含まれる次亜塩素酸ソーダによって、細菌の増殖は防げます。錆びの問題は、容器の材質を工夫することによって防ぐことができます。
 もう一つの問題は凍結ですが、沖縄では心配ありませんね。非電化冷蔵庫を北海道で試みると、普通の水では凍結が生じますが、不凍液を入れることによって、この問題は解決できます。

(神奈川県の渡邉さんから)
質問があるのですが、非電化冷蔵庫の「詳しい理論」のところに「特別な設計をすれば夏の夜に氷を作るこことも可能である」とありますが、それは具体的にどういった条件が必要なのでしょうか?自分なりに非電化冷蔵庫を考えてみようと思っています。よろしくお願いします」。

氷を作るための条件は以下の7つです、

(1)放射面積に比べて水の量を(うんと)少なくする、つまり、水を(うんと)薄く張る。→5mm程度がいい

(2)空がよく澄んでいる日に行う

(3)放射面から見て、空以外が見えないようにする、つまり、空以外からの輻射が放射面に入ってこないようにする。平たい屋上などが最適

(4)放射率を(うんと)高くする。できれば0.95以上に→水を張るパッとの内面を黒く塗装する(例えばアサヒペイントの耐熱塗料)

(5)断熱を完璧に行う→断熱材は50mm以上。絶対に隙間をつくらない。

(6)放射面に複数の透明板を重ねて、空中からの熱伝達を防ぐが、透明板の赤外線透過率を(うんと)高くする→薄いガラス板が良い。

(7)複数の透明板間で対流が生じないように、桟のようなものを入れる

以上の条件を整えれば、真夏の夜に氷を作ることができます。

Q (岩手の渡辺さんから/7月15日)
米保管用の2坪ほどの冷蔵庫を作りたい。米なので、室温15℃で十分――この冷蔵庫を納屋を増築し、200Vを引っ張って1.5坪のプレハブ冷蔵庫を置こうと考えていましたが、非電化冷蔵庫が可能なら非電化にしたいのですが、可能でしょうか?

A 住所を拝見すると海からも都会からも離れているので、夏の夜空は比較的に澄んでいると考えられますので、可能だと思います。建物の北側で、夏でも一日中日陰の場所を確保してください。地面を掘り下げていただいて、半地下冷蔵庫にします。蓄冷用の水は壁面に沿って大型PETボトル(2リットル)に水を封入します。透明な水でも放射率は(意外に)高いのですが、更に効率を上げるために、黒い水を封入します。天井部には放射板(金属製)を空に向けて設置します。放射板の外側は2重の透明板(できればガラス)で覆って外気からの熱伝達を防ぎます。透明板の裏側は放射率を高めるために、赤外線放射率の高い塗料で塗装します。壁面のPETボトルと放射板裏側との間で輻射電熱を起こさせて、PETボトル内の水を冷やします。
 詳細の設計は外気温度や、空の澄み具合や、土の状態(土によって熱伝導率が異なります)や、使い方(お米の出し入れの方法etc.)、予算等によって異なりますので、実際に設置する時に相談してください。応援します。
 以上が一番安く上げる方法です。放熱板と蓄冷用の水を直接に繋いでいないので、今回の恵まれた条件(空が澄んでいる、15℃でよい)の場合には通用しますが、一般的な条件ではこの方法は困難です。もう少しお金を掛ける方法を選ぶことになります。実は、この方法はモンゴルで設置する非電化冷蔵庫の方式です。
 半地下にする場合の問題は、温度よりも実は湿気対策です。弊著『愉しい非電化』や、非電化工房ホームページで紹介したような、湿度を低く保つ換気装置との合わせ技が必要になります。
 いずれにしても、具体的に取り掛かる際には相談してください。

Q (福岡の神浦さんから/7月17日)
突然のFAXで失礼します。冷蔵庫の件でいくつか質問があります。
@冷蔵庫内の水は腐らないのでしょうか?
A雨が降った場合、内に染み込まないのでほうか?
B放熱板は何でできているのでしょうか?日光が当たって熱くならないのでしょうか?

A @冷蔵庫内の水は(一般的な作り方では)ステンレスの容器に封入してしまい、外気とは接触しませんので、次亜塩素酸ソーダを含んだ一般の水道水を使えば腐りません。多少は腐っても(つまり細菌が繁殖しても)栄養が無いのでひどくは繁殖しません。少々細菌が繁殖しても飲むわけではないので、問題ないでしょう。問題が有るとすると、繁殖が進んで、代謝生成物も多くなり、スライム状態になると、水の自然対流が妨げられることくらいでしょうが密封されているので、そこまでは繁殖は進みません。
Aステンレスの容器で密封しますので、雨水は浸入しません。PETボトルで作っても大丈夫です。
B放熱板は薄い金属板で作ります。金属板ならなんでもよいのですが、アルミを使う場合は、放射率が極端に低いので、放射面側(外側)には放射率の高い塗料で塗装します。塗料が乗りにくいので、先ずプライマーを薄くスプレーしてから塗料をスプレーします。裏側は放射率を低く抑えたいので、銀色のままにしておきます。鉄やステンレスはそのままでも放射率は高いのですが、放熱板の放射率が命綱ですので、やはり放射率の高い塗料で塗装しておく方がよいと思います。板が薄いと、水圧で膨らんでしまいますから、波板を使う、あるいは補強梁をいれる等の工夫が必要です。

Q (滋賀の松本さんから/7月27日)
非電化冷蔵庫(ガンガンに冷えなくても良い)を製作しようと思うのですがもう少し詳しく知りたいのですが、どの様にすれば教えて頂けるのでしょうか?
 たとえば、放射率の高い塗料,大きさ、断熱材の厚さなど!よろしくお願いいたします。

A 非電化冷蔵庫は、空の澄み具合によって性能がまったく異なりますので、きちんとした設計の公式は有りません。
空がよく澄んでいる場合には、貯蔵室容積に比べて放射面積を少なめにできるので、安く上がるのですが、空の澄み具合が悪い場合には、放射面積を大きめにします。標準的な例で言いますと、貯蔵室容積が400リットルの場合、水も400リットル、放射面積は1u程度が基準になります。
放射率の高い塗料としては、アサヒぺンの耐熱塗料の黒が、赤外線放射率0.95くらいで、手軽に入手できる材料では最高です。
断熱材は発泡スチロールかグラスウールを使った場合、厚さ5センチで結構です。

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