やはりアナログがいい!

針が回る時計はいい。 時間が ずっと つながる
きのうは きょうに つながり、 きょうは あしたに つながる  

 私たちが子供のころ、温度計も、湿度計も、時計も、秤も、ナニモ、カニモ、計器はアナログ式でした。例えば時計。長針と短針で時刻を表示するのがアナログ式、1:08のように数字で表示するのがディジタル式です。1970年に米国ハミルトン社が世界初のディジタル腕時計パルサーを発売以来、低価格の魅力も加わって、ディジタル式時計は世界的な大流行となります。1974年には日本のカシオもディジタル腕時計カシオトロンを発売。電卓メーカーのカシオは一躍世界的な腕時計メーカーとなります。

ディジタル式は現在の“時刻”が一見して分かりますが、12時までには後何分かな‥‥というような“時間”は頭の中で計算しなければなりません。時刻だけではなくて時間も一見して分かる方がよさそう‥‥ということで、時計はアナログ式に揺れ戻りました。2001年に世界中で作られた腕時計1億2,400万個の74%はアナログ式です(電気を使わない機械式アナログはその内の2%)。

 時計はアナログ式に揺れ戻りが起こっているのですが、秤や温度計や、体温計や、湿度計はますますディジタル化して行きます。電気で動かす場合は、ディジタルの方が格段に簡単で割安だからです。「ディジタル式の方が正確に読み取れる‥‥」という意見もあるでしょう。科学秤のような場合はその通りでしょうが、例えば湿度計はどうでしょうか。市販の湿度計の精度は±5%程度だということは技術者の方はみなさんご存知です。精度が±5%なのに、1%の位まで正確(?)に読み取る意味はありませんし、普通の生活に1%の位の湿度を知る必要性も希薄です。「大体60%くらい」という程度が良さそうです。この「大体」というのもアナログ式の良さだと(ルーズな私には)思えるのですが、いかがでしょうか。   

 ガリレオ・ガリレイという名を付けた、ドイツ製の有名な温度計があります(ドイツTFAドスマン社製)。ガラスの筒の中に水が封じ込められ、色の着いた液体(無毒化した炭化水素)を封じ込めたガラス球が水中に浮遊しています。ガラス球には「25℃」のように温度を表示したタグがぶら下がっています。ガラス球は温度が高くなると沈下し、温度が低くなると上昇してゆきます。26℃以上のガラス球が下に沈んで、24℃以下が上に浮いていると「今の気温は25℃くらいかな」と判断します。28℃のガラス球が中間に漂っていると「28℃くらい」と読み取ります。慣れてくるとタグを読まなくても分かるようになります。段々寒くなって行くときはガラス球がゆるゆると上昇してゆきますから、「ウーッ、寒くなるぞ!」という具合です。「カッタルイ!」と言われそうですが、一度試してみてください(最近は日本でも安価に入手できます)。「温度を愉しむ」という新しい世界が開けてくるかもしれません。アナログならではの愉しさです。

 「アナログの極み」のような湿度計を作ってみました。「紫陽花(アジサイ)」という名前を付けた湿度計です。葉書の2倍くらいの大きさの紙いっぱいに額紫陽花の絵が描かれています。湿度が低い時には花びらの色は濃いブルーなのですが、湿度が高くなると(途中赤紫を経て)ピンクに変わります。下の方には色見本が付いていて、色に応じた相対湿度を表示してあります。慣れてくると、遠くから紫陽花の色を一瞬見ただけで大体の湿度がわかります。20年くらいは保ちます。梅雨時は鬱陶しいものですが、梅雨時ならではの愉しみの一つが紫陽花や花菖蒲ですから、紫陽花にすれば湿度を愉しめるかな‥‥と考えてみました(昔の発明ですが、好評でした)。仕掛けは簡単です。ろ紙で花びらを作って、適当な濃さ(10%くらいがいい)の塩化カルシウム水溶液と塩化コバルト水溶液を含浸させて乾燥させて貼り付ければ出来上がり。簡単にできますから、絵心のある方はお試しください。自分で作って使うのは特許侵害にはなりませんから安心してください。作って売る場合は特許侵害になりますから相談してください。

 ディジタル全盛のこの時代、周りじゅう数字だらけで(映像だらけで、音響だらけで、宣伝だらけで、情報だらけで‥‥フーッ!)窮屈になってきました。ちょっとアナログに戻してみませんか(アナクロだと叱られるかな!)

『愉しい非電化』より抜粋

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