● ま え が き

アインシュタインはこう言ったそうだ。「ある問題を引き起こしたのと同じマインドセット(心の枠組み)のままで、その問題を解決することはできない」と。しかし、気候変動に代表される深刻な環境危機に直面してもなお僕たちは、問題を引き起こしたのと同じマインドセットのままで、その問題を解決できるかのように思い込み、振舞っている。ガソリン車が問題なら電気自動車で、石油火力発電が問題なら太陽光発電で、プラスチックが問題なら生分解性プラスチックで・・・という具合だ。

 ガソリン車が問題なら、車が無くても幸せに生きられる社会システムに変えてゆくことが、なぜ先に来ないのだろうか?石油火力発電が問題なら電力消費量を減らしても幸せ度が上がるライフスタイルが、なぜ追及されないのだろうか?プラスチックが問題なら、自然素材を使った丁寧な暮らしに変えてゆくことが、なぜ工夫されないのだろうか?

 車や電気やプラスチックを大量に使い続けるのは、それが無いと幸せに生きてゆけないという思い込み、あるいは、どうしていいのかわからないという諦めが理由の一つだと、僕は思う。工業製品を主役にして経済成長を指向する社会システムがもう一つの理由であることは、もち論のことなのだが。

 そこで、車や電気やプラスチックを少ししか使わなくても幸せ度が上がるアイディアを、再び提案したくなった。“再び”というのは、『愉しい非電化』(洋泉社)という本を2004年に書いて提案したことがあるからだ。

 ただし、幸せ度が上がっても支出が増えるアイディアは避けたい。金持ちの人しか幸せになれないからだ。そうではなくて、幸せ度が上がると支出が減るアイディアが好ましい。技術的に難しいアイディアも避けたい。工作が得意な人しか実現できないからだ。そうではなくて、文系のお母さんでもできるような簡単なアイディアが好ましい。一人寂しくではなくて、みんなで愉しめるアイディアがいい。

 つまり、簡単にできて、支出が減り、幸せ度が上がるアイディアがいい。非電化工房を2000年にスタートしてから、そんなことばかりを追求してきたので題材には事欠かない。とは言うものの、簡単なことばかりでは物足りない方もいらっしゃるだろうし、実は僕自身も物足りないので、非電化冷蔵庫とか重力エレベーターのようなやや難しいアイディアも混ぜてみた。

 アイディアを77個並べてみたので、その中から愉しく実現できて、支出が減り、幸せ度がアップしそうなテーマを選んでいただきたい。技術的にむずかしそうだったら、工作が得意な人と組んでトライしてみてはどうだろう。いい仲間が増えるかもしれない。余談だが、仲間と技術は一生の財産になると、僕は思っている。 

 アインシュタインはこうも言った。「狂気。それは同じことを繰り返しながら違う結果を望むこと」と。僕たちはいま狂気の時代を生きているのかもしれない。この狂気の時代を凛と生き、マインドセットを打ち破って問題を愉しく解決していただきたい。本書がその一助となれば本当に嬉しい。

 

ボクたちの地球が

希望の星でありつづけるように、

 

ボクたちに できることを

 

ボクたちは、 したい。

 

20237月 藤村靖之(非電化工房代表)